ここでは、代表的な能の演目や公演予定の演目の舞台写真をあらすじ付きで紹介しています。
観能される前にさっと目を通していただくと、より楽しんでいただくことが出来るでしょう。
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「安達原(あだちはら)」 シテ:浦田保親
いやゆる鬼女伝説の曲です。ストーリー性もあり、分かりやすく、能を見慣れてない方でも見やすい曲です。
前半は人の世の無情さをテーマに、人性の単調な長さを糸の長さとかけて、静かに描かれています。
後半は一転し、謡も囃子も、そして動きも大変激しくなり迫力満点です。
しかしどこか、この鬼女の悲しさや侘しさもにじみ出ている感もあります。
いったい邪(よこしま)なのは、人なのでしょうか、鬼なのでしょうか…。
紀州(和歌山県)熊野の山伏祐慶ら一行は、
廻国巡礼の途中に奥州(福島県)安達原に着く。
日が暮れてきたので、一軒の庵に宿を借りる。
その庵の主は 一人の淋しき老女であった。
山伏は庵の中にある糸車を見つけ、
老女に糸を繰るところを見せてくれと所望する。
すると老女は静かに糸を繰り始め、
人の世の無常を嘆き、糸尽くしの 唄を謡ったりし、やがて泣き崩れてしまう。
そして老女は、夜も更け寒さも増してきたので、
山へ焚き火用の木を取りに行ってくる由伝える。
但しその間、自分 の閨(寝室)の中は絶対見ないようにと念を押し、
山伏も絶対見ないと約束する。
安心した老女は山へと出かけて行く。
しかし、山伏達と同行していた能力は、主の閨の中を見たくてたまらない。
やがて山伏達が寝入った隙に、能力はついに閨の中を見てしまう。
するとそこ には人の死骸が山の様に積まれていた!
ビックリした能力は此処こそ鬼の棲み家だと山伏に伝え、一行は驚いて逃げ出して行く。
そこへ先程の老女が鬼女の本性の姿となり、約束を破った事を恨 み襲いかかる。
山伏達は必死に祈り、ついに鬼女は祈り伏せられ、夜嵐と共に消え失せていった。