ここでは、代表的な能の演目や公演予定の演目の舞台写真をあらすじ付きで紹介しています。
観能される前にさっと目を通していただくと、より楽しんでいただくことが出来るでしょう。
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「融(とおる)」 シテ:浦田保親
この曲は、融の美的生活の追憶を主題に、栄えるものの滅び行く虚しさを表現しています。
前段は、汐汲みの老人に以前の栄えていた六条河原院について語らせ、変わらぬ自然の中で、やがて老廃していくものの儚さ・虚しさを表現し、後段は、優美な貴人にかつての英華を再現させ、とても優雅な舞台構成となっています。
一曲を通じて“月”をテーマに、閑雅かつ優雅な秋の名曲です。
東国から都へ上って来た僧が、六条河原院の廃墟で休んでいると、
田子を担いだ老人が現れる。
僧が声をかけると、「この所の汐汲みだ」と答える。
「ここは海辺でもないのに汐汲みとはおかしいのでは?」と尋ねると、
「ここは昔、源融が大きな邸宅を造り、その庭に陸奥の塩竈の致景を移し、
日毎に難波の浦から海水を運ばせ、塩を焼かせた所だ」と答える。
そして「今はそれを相続する者もなく、この様に荒れ果ているのだ」と語り、
ここから見える名所をについて語り、 汀に立ち寄り汐を汲むかと思うと、
その老人の姿は見えなくなってしまった。
やがて僧が旅寝をすると、融が在りし日の優美な姿で現れ、
名月のもと昔を偲んで舞を舞い…
夜明けとともにその姿は月の都へと消えていった。